CTOメッセージ
「人の感性に寄り添うテクノロジーで未来をつくる」の実現に向けて
1948年の創業時、最初に製品化したロータリースイッチ以来、私たちアルプスアルパインは、電子部品の開発・製造を通じて「手応え」、「響き」、「高級感」、「心地よい」といった、感覚的で数値化しにくいお客様のご要望を形にすることに挑み続けてきました。
「指先や耳から伝わる」人の感覚という曖昧な領域を製品として具現化していくことは、非常に難易度の高い挑戦です。しかし、AIによるデジタル化が加速する今だからこそ指先や耳から伝わる“感性”に寄り添う製品を生み出し続けることが、誰もが心地よく、健やかに暮らせる社会の実現に不可欠なものであると私たちは考えています。
このたび、これからの10年先を見据えた新たな企業ビジョンとして「人の感性に寄り添うテクノロジーで未来をつくる」を策定しました。今後このビジョンは、会社全体がひとつの方向へ向かう羅針盤となっていきます。CTOとしてはこのビジョンの達成に向けて以下の3つの重点指針を推進していきます。
1. 蓄積された「感性技術」を競争優位性として発展させ社会課題を解決する
私たちは、デジタルの壁や複雑化する社会課題を、人の感覚を定量化し設計に活用できる感性技術をこれまで以上に進化させることで解決することを目指します。
電子デバイス事業においては、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)と高精度センシング技術を核として、IoT・AI時代にあらゆるデバイスを「感性をデジタル値へ変換する高度なエッジコンピューティング・ソリューション」へと進化させます。ミリ波センサーや磁気センサー、これらを制御する専用ASICといったデバイスを単なる「部品」としてではなく、知性と感性をあわせもつソリューションとして提供することにより、唯一無二の顧客価値を提供していきます。
モビリティ事業においては、「デジタルキャビン」のコンセプトのもと、独自の音響技術、アクチュエーター、センシング技術をハードウェアとソフトウェアが一体となったシステムとして融合させ、今後のSDV時代のあらゆるシーンで「安全・快適・感動」という無形な価値をお客様へ提供していきます。
2. マルチモーダルセンシングを次の中核技術へと進化させる
近年、生成AIの進化とともに、映像・音声・テキストだけでなく異なる物理、化学データも組み合わせて分析するマルチモーダルAIが主流になりつつあります。このため、次世代のHMIにおいては、複数のセンサーから必要な情報だけを抽出する「マルチモーダルセンシング」が中核技術として重要性を増しています。アルプスアルパインには、このセンシングに必要な技術となるミリ波センサー、磁気センサー、静電センサーといった多様なセンシング技術、約20年の技術蓄積がある低ノイズ回路設計などを特徴としたASIC設計技術、センサーの物理量へ付加価値をつけお客様が使いやすいデータへ変換する内製アルゴリズム開発力があります。これらを有機的に統合してセンサーへ「知性」を吹き込むことでマルチモーダルセンシングを具現化し、製品の差別化が可能になると考えています。 さらにこの技術は「デジタルキャビン」における車内空間のさらなる高度化にとどまらず、フィジカルAIの発展が新たな社会変革をもたらす中で注目されるヒューマノイドロボット分野においても、誰もが使いやすいインターフェースを実現するソリューションの提供へとつながっていくと期待しています。
3. 「人に賭ける」
「人に賭ける」はアルプスアルパインが大切にしてきた価値観の一つです。一人ひとりの成長と挑戦が個人と会社の持続的な成長につながっていくという信念のもと、「技術の育成」と「人の育成」に取り組んで参ります。
そのひとつが、外部との連携強化です。東北大学など5大学との包括連携協定、東京大学との社会連携講座による共同研究などの様々な産学連携を深化させることにより、大学の基礎研究成果とアルプスアルパインの製品化・量産化技術を融合させ、10年以上先でも通用する技術やその種を育てていきます。この取り組みは技術開発にとどまらず、社会課題を技術課題へ転換できる思考を持つエンジニアの育成にもつながると考えており、「人の感性に寄り添う」というビジョンの核を担う人材を輩出していきます。
また、企業様とのオープンイノベーション活動も強化していくことで、技術の変化が激しい時代に機敏に対応できる研究開発・事業開発への感性を磨いていきます。社内外の知・技術と人の融合の場を積極的に構築することで、新しいバリューチェーンを生み出すことができる人財を育成して参ります。
「人の感性に寄り添うテクノロジーで未来をつくる」は、企業理念でもある「アルプスアルパインは人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します。」の10年先の世界を言語化したものです。今後様々な施策や投資などを推進していくことにより、ビジョンを具現化し社会課題の解決に貢献してまいります。 これからのアルプスアルパインに、ぜひご期待ください。
技術本部長 CTO